COLUMN
コラム
2023/03/31
体外受精・顕微授精の治療スケジュールや費用などについて
体外受精は人工授精で妊娠が成立しなかった場合や、卵管に卵子が取り込まれにくくなっている方、精子の機能が低下している方、女性の年齢が高い場合などに適応されています。2020年のデータによると日本では14人に1人が体外受精で生まれており、近年ではめずらしい治療ではなくなってきています。こちらでは体外受精と顕微授精について詳しく説明していきます。
1. 体外受精とは
2. 体外受精の受精方法について
3. 体外受精の治療方法とスケジュール
4. 体外受精の費用(保険
5. ステップアップについて
6. まとめ
体外受精とは
体外受精とは膣から針を刺して卵巣から卵子を取り出し、体外でその卵子と精子を受精させたのち、受精卵を培養(3~5日)した後、子宮に戻す治療法です。下記のような体内での受精が難しい方や不妊原因が不明の方が治療の対象となります。
・卵管閉塞、卵管狭窄…卵管がつまっていたり狭くなっている方。クラジミア感染症や子宮内膜症などの性感染症や腹腔内の炎症による卵管周囲の癒着などが原因となります。
・免疫性不妊…女性の体内に精子の運動性や受精能力を妨げてしまう抗精子抗体ができている方。
・原因不明不妊(加齢に伴う不妊)…検査をしても原因はないのに妊娠に至らない方。近年では加齢による卵子の機能低下が原因となっている場合が多くなっています。
・乏精子症…射精は可能であるににもかかわらず、精液中の精子の数が少ない方。
・無精子症…射精は可能であるににもかかわらず、精液中に精子がまったくみられない状態の方。
その他、子宮内膜症や多嚢胞卵巣症候群(PCOS)などの方も適応されます。
体外受精の受精方法について
体外受精は受精方法によって「C-IVF(コンベンショナルアイブイエフ)」と「顕微授精(ICSI:イクシ―)」に分けられます。
・C-IVFは一般的に「ふりかけ」と言われている方法で、卵子に精子をふりかけて受精させる方法です。精子のちからで受精させるため精液所見が良い場合に有効となり、卵子1個に対して10万~20万匹の動いている精子が必要です。
・顕微授精は、いまの生殖医療のなかでもっとも高度な治療技術です。顕微鏡下で、ピペットという細いガラス管で捕まえた精子1匹を卵子の中に注入して受精卵をつくったのち、子宮に戻す方法です。顕微授精は、体外受精ではクリアできない受精障害をクリアできるほか、顕微授精では卵子1個に対して、運動精子1匹あればいいので、精子の運動率が悪い場合や、無精子症などで極端に精子が少ない場合でも治療可能です。当院では、C-IVFの正常受精率は約65~70%、ICSIを行った場合の正常受精率は80%以上と高い成績を誇ります。
体外受精の治療方法とスケジュール
体外受精は、卵胞を育てる「卵巣刺激」、卵子を女性のからだから取り出す「採卵」、取り出した卵子を受精させ、ふたたび子宮に戻す「胚移植」に分けられます。
・卵巣刺激…生理3~5日目に診察。飲み薬や注射などのホルモン剤を使用して、複数の卵子を育てていきます。採卵日までの間に、血液検査によるホルモン値測定や経腟超音波検査で卵胞の発育をチェックします。
・採卵…卵巣刺激の初日からおよそ12~15日程度で採卵。採卵用の針を使って卵巣内から体外に卵子を取り出します。静脈麻酔で痛みを取り除くのでオペ中の痛みはありません。
・移植…成長した受精卵を専用のカテーテルを使い経腟超音波でモニターしながら子宮内に戻します。
※新鮮胚移植の場合は採卵から3日前後で移植します。凍結融解胚移植の場合は、一旦受精卵を凍結し、子宮内膜を妊娠しやすい状態に整えてから移植します。
・妊娠判定…移植から2週間目が妊娠判定日となります。
体外受精の費用(保険)
・採卵費用 9,600円~採卵個数により加算
・受精費用
体外受精(C-IVF) 12,600円
顕微授精(ICSI) 14,400円~ 個数により加算
・受精卵培養費用 13,500円~ 個数や胚盤胞培養を目指場合に加算
・胚移植費用
新鮮胚移植 22,500円
融解胚移植 36,000円
※そのほか再診料 ・ 検査費 ・ 薬剤費等が 診察日ごとに別途発生し、採卵から移植までのトータル費用はおよそ150,000円ほどです。
ステップアップについて
保険診療で体外受精を行われ、次のステップを望まれている場合、自費の体外受精や先進医療検査をご案内することができます。ご希望される方は医師にご相談ください。
・自費の体外受精のメリット(浅田式不妊治療)
・着床前遺伝学的検査(PGT-A、PGT-SR、PGT-M)
・先進医療検査
まとめ
体外受精は、最終的なステップアップとして、もしくはタイミング法や人工授精での治療が難しい場合などに実施されます。卵巣から卵子を取り出し、体外でその卵子と精子を受精させたのち子宮に戻す治療法で、受精方法によって「C-IVF」と「顕微授精(ICSI)」に分けられます。
体外受精のかなめは培養室となるため、クリニックによって成績に差が出やすい治療です。培養技術の成績である正常受精率などのデータはあらかじめチェックしておきましょう。