COLUMN
コラム
2023/04/03
精液所見についての解説
いろいろな基準値
精液所見について
1) 基準値は簡単に妊娠された方の精液所見を統計処理し下限をみたものです。他の医学的検査と大きく意味が異なり、精子の基準値はひとつの目安であり、いろいろな基準値があります。
2) 精子数・運動率が基準以上であっても妊娠を保障するものではありません。
3) 精子の数や運動率は妊娠率とは直接関係ありません。
4) 精液所見は大きく変動しますので、1回では分かりません。複数回の検査が必要です。一般に同じ人でも、何もしていなくても、精子濃度も運動率も4~5倍、時には10倍も変化し、1回の検査では70%が異常と判定されるといわれています。
5) WHOの基準は一番甘い基準値です。わざわざ「正常値として使用していけません」とのコメントが解説に付け加えられています。
6) WHOのガイドラインでは、精液検査前には禁欲期間を2-7日に調節するのが望ましいとしています。精液所見が正常な方では8日を超えても精子の数は頭打ちとなり、更に精子の質も低下していきます。 一方精子の数が少ない乏精子症の方では、禁欲期間1日がベストで以後運動率は低下し、精子の質も低下することが分かっています。従って禁欲することで精液所見は悪化する、と考えた方が良いと思います。
7) 精子は、もとの精母細胞から作られるのに約80日(約3ヶ月)かかります。したがって最近の体調に左右されている訳ではありません。
8) 精子の数や運動率を大きく改善することが証明されている治療は今のところありません。
(葉酸と亜鉛については、わずかに精液所見を改善するという論文があります。また、直接精子にふりかけると運動性が良くなる薬剤もあります。)
9) 現在、精子所見を改善することが難しいので、数の少ない精子を利用する体外受精・顕微授精の技術が発展しました。
10) 精巣(睾丸)腫瘍が原因で精液所見に異常が生じ、泌尿器科受診が必要となる場合があります。