診療時間

浅田レディース名古屋駅前クリニック

診療時間
09:00 - 12:00
15:00 - 19:00
  • ※最終予約枠は終了時間の30分前となります。
  • ☆: 連休中の祝日は診療を行います。

浅田レディース勝川クリニック

診療時間
09:00 - 11:00
15:00 - 18:00
  • ※最終予約枠は終了時間の30分前となります。
  • ☆: 連休中の祝日は診療を行います。

COLUMN

当院の胚の形態評価について解説

当院の胚の形態評価について解説

胚の形態評価は、妊娠につながる可能性が高い胚を選択するもので、胚移植の優先順位を決定する上で重要な要素の一つです。このコラムでは胚の成長段階ごとの当院の形態評価について、現役胚培養士が解説します。

目次
胚の評価方法
1) 受精卵の成長の様子
2) 培養1日目-前核期(Pronuclear stage)
 正常受精とは何か
3) 培養3日目-分割期(Cleavage stage)
 分割期の評価方法
4) 培養5日目以降-胚盤胞(Blastocyst stage)
 胚盤胞の評価方法
まとめ

胚の評価方法

1) 受精卵の成長の様子

受精とは、精子が卵子の細胞内に入り込んで、遺伝情報を持つ核が融合する現象です。正常な受精が確認できた受精卵は培養とともに細胞が分割していきます。その後、分割した細胞同士がくっついて、将来赤ちゃんになる細胞と胎盤になる細胞が分かれる段階の胚盤胞に成長します。この段階まで成長した受精卵は着床の準備ができているため妊娠に繋がる可能性が高いとされています。当院ではタイムラプスインキュベーターを使用しています。これにより、正確な評価が可能になります。また、環境の変化を最小限に抑え、胚に対するストレスを軽減することができます。




図1.受精卵の成長の様子

2) 培養1日目-前核期(Pronuclear stage)

前核期は受精直後から細胞分裂までの時期を指します。受精操作を行った約17時間後に観察し、正常に受精しているかどうかを確認します。

評価のポイント

前核が二つ見えること!

 

前核とは、遺伝子情報が入った細胞小器官です。女性由来と男性由来の2個の前核(2PN)が確認できた時点で正常な受精と判断します。前核が見えない場合(0PN)は受精していないと判断します。また、3個以上前核が確認できる場合(≧3PN)は異常な受精をしていると判断しその時点で観察を終了します。また、前核が1つだけ見える場合(1PN)1)は受精していないのか二つの前核が融合しているのか判断ができないため、培養を継続して胚盤胞になった時点で凍結を行います。
1)野老ら, 第107回日本繁殖生物学会大会

図2.培養1日目の評価

3) 培養3日目-分割期(Cleavage stage)

培養1日目で正常受精が確認できた受精卵は培養を続けて3日目に評価を行います。元々1つだった細胞が分割していくつかの細胞に分かれます。当院ではVeeck分類2)を基本とした独自の評価方法を使用しています。
2)Veeck, L. (1991): Cleaved human concepti. In Atlas of the human Oocyte and Early conceptus (Lynn Brown C, ed), pp163–230, Williams and Wilkins, Baltimore.

評価のポイント

均一性、割球数、フラグメント

 

 

図3.培養3日目の評価

①均一性

分割した細胞同士の大きさが同じかどうかを評価します。細胞同士のサイズが均一であれば―(マイナス)、異なるサイズの割球がある場合は+(プラス)と評価します。

②割球数

分割した細胞の数を「割球数」と呼びます。培養と共に分割が進み、3日目では約8個の細胞に分割している状態になります。

③フラグメントの量

フラグメントとは、受精卵が細胞分裂時にできる細胞質の断片のことです。正常に分割が進んでいるほどフラグメントの量は少なくなります。フラグメントが胚全体に占める割合をI~V段階で評価をします。

Ⅰ… 0-5%
Ⅱ… 6-20%
Ⅲ… 21-30%
Ⅳ…-31-50%
Ⅴ… 51-100%

当院ではこれらの評価を1つの数字とアルファベットで表します。数字は割球数を示し、アルファベットは均一性とフラグメントを合わせた評価で、A~Eの5段階評価で表しています。

また、これらの観点の評価を総合的に判断して、good-fair-poorの3つのグレードに分類します。移植時にはグレードの良い胚から順番に選ばれ、同じグレードの胚が存在した場合はそれぞれの評価方法に戻り優先的に移植に使用する胚を決定しています。

【実際の胚画像】

図4.実際の胚画像(培養3日目 左から順にgood, fair, poor)


4) 培養5日目以降-胚盤胞期(Blastocyst stage)

培養5日目以降は、内部細胞塊 (inner cell mass:ICM)と栄養外胚葉(trophectoderm:TE)に分化していきます。当院ではGardner分類3)を基に評価を行います。
3) Gardner et al. (2000): Blastocyst score affects implantation and pregnancy outcome: towards a single blastocyst transfer. Fertil. Steril., 73, 1155–1158.

 

評価のポイント

胞胚腔、ICM、TE

 

①胞胚腔の大きさ

胞胚腔は細胞が集まった部分の中に見られる空間のことを指します。この空間の大きさが成長度の指標となります。成長度は1~6段階で評価し、当院ではBlast3以上の評価が凍結に用いられます。

▽Blastocystの分類
Blast1 (初期胚盤胞)…胞胚腔は胚の体積の半分未満
Blast2 (胚盤胞)…胞胚腔は胚の体積の半分以上を占める
Blast3 (完全胚盤胞)…胞胚腔は胚の全体を満たし、ICMとTEが判別できる
Blast4 (拡張胚盤胞)…胞胚腔が拡張し、透明帯が元の厚さの半分になる
Blast5 (孵化胚盤胞)…TEが透明帯から脱出し始めている
Blast6 (孵化後胚盤胞)…胚盤胞が完全に透明帯から脱出した

図5.胚盤胞の評価

②ICM (内部細胞塊)の大きさ

ICMは将来赤ちゃんになる細胞の集まりであり、その大きさを次の3段階で評価します。

A: 非常にしっかりとした細胞塊が認められる
B: 細胞塊は小さいが、ある程度の大きさの塊が認められる
C: 細胞塊がごくわずかしか確認できないもしくは全く認められない

図6.ICMの評価

③TE (栄養外胚葉)の密度

TEは将来胎盤になる細胞であり、胚盤胞の外周に対する密度を次の3段階で評価します。

A: 多数の細胞が密に存在しTEが外周の100%を覆っている
B: 少数の細胞が疎に存在しTEが外周の50-99%を覆っている
C: 細胞数は非常に少なく、TEが外周の50%未満を覆っている

図7.TEの評価

 

これらを複合的に判断して成長度を数字で、ICMとTEをアルファベットで表します。

 

また、この最終的な評価によって移植に用いる順番を決定しています。

【実際の胚画像】

図7. 実際の胚画像(培養5日目 左から4AA, 3BB)


まとめ

胚の形態評価は、妊娠につながる可能性が高い胚を選択し、胚移植の優先順位を決定する上で重要な要素の一つです。評価の良い胚ほど妊娠率が高くなるという報告もあります(Gardner et al. 2000)が、あくまで見た目の評価であるため胚の質を完全に決める基準ではありません。治療を進めるための参考にしてください。

すべて 不妊治療の基礎知識 お悩みと疑問 研究・学会発表 その他