患者さまからのお手紙
2020年01月に出産された患者さまから
結婚してから10年、子供ができなくても特に治療をしたりする訳でもなく40歳になり、子供がいない大人2人の人生を考えていました。ただ、40歳という年齢は私にとっては分岐点に感じ、このままでいるのか、不妊治療という道を最後に挑戦してみるのか夫婦で話し合い、挑戦することにしました。
年齢が年齢なので出来るだけ多く卵子を保存しておきたく、採卵は2回。先生方のアドバイスをいただき、2回は違う方法での卵子の育て方でした。そして1回目の移植で2個戻しましたが妊娠には至らず、2回目の移植で次は胚盤胞2個を戻し、1つが妊娠に至りました。わたしはアメリカに住んでいて、アメリカから一時帰国しながらの不妊治療でした。主人は頻繁には帰国できないので、精子は凍結させていました。不妊治療は身体ももちろん大変でしたが、アメリカと日本との往復とスケジュールの管理をする中でプレッシャーが大きくて、何よりも精神的に苦しかったです。
不妊治療してアメリカで出産して、そして今の子育ての中で感じることは、生命の尊さです。わたしは不妊治療をしたことで、卵を育てるところから愛情を注いで子供を育てたという思いがあります。勿論、妊娠出産に至ったことは喜びですが、もしもそうでなかったとしても、不妊治療をしたことへの後悔は1ミリもなかったと思います。採卵までの間、卵を育てていく中で、たくさんお腹に話しかけました。そして、凍結させている受精卵たちにも今でも心の中で話しかけています。
アメリカで無事に出産した女の子は今5ヶ月です。治療を経て、一緒に戦ってきた気持ちがあるからか、この子は生命力の強い逞しい子に思えます。不妊治療はみんなそれぞれ違うし同じように当てはまりませんが、涙することもあるし、楽しい将来をイメージすることもあるし、ネガティブとポジティブが入り混じって、心が苦しくなることは皆が経験することだと思います。身体の痛みは時間が解決するので忘れます。でも、辛かった心、涙した記憶は残ります。ただ、言えることは、この記憶は悪い記憶ではないと思うのです。それだけ頑張った証拠だし、それだけまだ見えぬ子供に感じた愛情だと思うのです。
どうか、皆がどんな結果に至ろうとも、不妊治療の経験が、その時に感じた気持ちが宝物となりますように。
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