培養室(Lab)
第69回アメリカ生殖医学会(ASRM)
国際学会で優秀賞を受賞
アメリカのボストンで開催されたアメリカ生殖医学(American Society for Reproductive Medicine: ASRM)の第69回学術総会に浅田院長および胚培養士3名、研究員1名が参加しました。
ASRMは前号で紹介しましたヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)と並ぶ生殖医療に関連する大きな学会です。
当培養室からは、ポスター発表3題とビデオセッション1題の発表を行い、ビデオセッションではART部門賞を受賞することができました。以下はASRMに参加し、ビデオセッションを行った研究員の感想です。
学会参加の感想
今回、私は初めてASRMに参加させていただきました。ボストンは、名古屋よりも一足早く紅葉のシーズンが訪れており、赤や黄色に染まった街路樹がとてもきれいでした。学会では一般講演として、口頭発表488題、ポスター発表1343題が発表され、さらに生殖医学分野で著名な先生方のご講演や、教育講演、シンポジウムなど数多くの講演を聴講することができました。
一般講演では、胚の観察を経時的に観察し、形態的な変化や胚発生速度から胚盤胞形成率、妊娠率または染色体の異数性を予測するといった内容の発表が多くみられました。ビデオセッションでは現在、浅田生殖医療研究所で行っている研究について発表させていただきました。
我々は、異常受精胚として胚移植されない1前核胚および3前核胚は、本当に異常なのかを蛍光ライブセルイメージングで解析し、1前核胚の多くに雌雄の染色体をもつ胚が存在することをこれまでに明らかにしています。これらの結果は、これまで異常受精胚として移植されなかった1前核胚の中には、妊娠や出産に結び付く可能性がある胚が存在していることを示しています。この研究成果を発表した結果、ビデオセッションのART部門賞を受賞することができました。
当院が行っている研究が国際学会で認められ、大変嬉しく思います。当院での生殖医療技術や研究成果を発表し、さらに新しい知識を得ることができたことで、大変有意義な学会参加となりました。学会で得られた情報や経験を生かし、患者さまの治療に貢献出来るよう今後も努力していきたいと思います。

受賞に関する院長からのコメント
ASRMのビデオセッションART部門賞を取りました。私は1993年からASRMの会員で、1994年のASRMではICSIの研究でAwardの候補になったことがありましたが結局落選しました。しかし、論文にまとめて早く出すようにと言われ、非常に早く論文になった記憶があります。
今年、別の形で私の名前の入った研究でART部門賞が取れました。
アメリカでの私のボスだったDr. Susan Lanzendorfはこの4月に膵臓癌で突然亡くなり、残念ながら私は彼女にこの受賞を伝えることができませんでした。しかし、今もアメリカ、ヴァージニア州、ノーフォークにいるSusanの同僚だった人から「きっとSusanも喜んでいるだろう」という言葉をもらい、また教材としてその映像を使いたいとも言ってもらいました。
留学から、私がICSIを始めてから20年、時の流れの速さと自分の老いにため息です。
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