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研究の臨床応用に向けて -続編-
浅田生殖医療研究所での研究について紹介します( 前回の生殖医療研究所の続き)。今月号ではライブセルイメージングという技術が「どのように臨床に応用できるのか」について紹介していきます。
不妊症の主な原因の1つとして卵子の発育不全があげられます。 卵子の発育不全の要因は、母体の高齢化や染色体の異常と考えられています。 我々胚培養士は、受精卵の観察に倒立顕微鏡を用います。この観察では受精卵を形態的にしか評価することができず染色体の異常を見分ける事ができません。 初期胚ライブセルイメージング技術は、蛍光タンパク質を用いることで形態だけでは判断のできない受精卵の染色体の正常性を判断することができます。
左が正常なマウス受精卵、右が異常なマウス受精卵。
染色体の異常は形態だけでは見分けることができません。
このような技術が臨床応用できるようにマウスを用いた研究を行っております。実際にマウス受精卵を観察した画像を紹介します。 この技術は受精卵の染色体を蛍光タンパク質で染めることができるため、染色体異常による染色体の置き忘れを観ることができます。マウス受精卵を用いた研究では染色体の置き忘れが起こると着床しても流産となることが分かりました。マウスではこの技術により、早期流産を回避し妊娠・出産に結びつけることが可能となりました。まだ研究段階であるため、患者さまにこの技術を提供することはできませんが、マウスを用いて有用性に関する基礎的なデータを集めることで患者さまの妊娠・出産に大きく貢献できるよう研究を続けていきます。
黄矢印のように染色体の置忘れが観られる異常なマウス受精卵(ACS)であっても、正常なマウス受精卵(NCS)と見た目が変わらない良好な胚盤胞に成長しますが、このような胚は着床をしても結果として流産となります。
浅田生殖医療研究所
培養研究部は、神戸にある理化学研究所と共同研究を開始し、所属研究員1名が技術習得のために理化学研究所に派遣されています。
以下に共同研究内容の1つである初期胚ライブセルイメージングという技術を用いた研究について紹介します。
初期胚ライブセルイメージングとは胚にダメージを与えずに卵割時の染色体の動きを観察し、その正常性を判断することが可能な技術となります。この方法を用いて「どのような受精卵が着床・妊娠に結びつくのか」について研究を行っています。
この初期胚ライブセルイメージングは、世界トップクラスである理化学研究所ゲノムリプログラミング研究チーム(若山照彦チームリーダー)の山縣一夫研究員らが独自に観察方法および顕微鏡システムを構築し観察条件を最適化した技術です。
上記の技術は、蛍光タンパク質を用いることで通常の観察では、観ることのできない受精卵の染色体の正常性を判断することができます。
我々は、この技術は患者さまの妊娠に大きく貢献する可能性があると考え、いち早く導入し受精・発生に関するメカニズムを明らかにしようと試みています。
下記に実際にマウス胚を観察した画像を紹介します。
