浅田生殖医療研究所
研究結果を臨床の現場に!1前核胚の有用性
研究紹介の第3弾のテーマは「1前核胚」です。一般的に異常受精と考えられていた1前核胚ですが、当院ではその中に正常な胚も存在することを科学的に明らかにしました。今回はこの研究についてご紹介いたします。
受精後の卵子には、卵子(お母さん)由来の染色体と精子(お父さん)由来の染色体が存在し、それぞれが核を形成します。それらの核を雌性前核、雄性前核と呼び、それぞれ1個ずつ、合計2個の核が形成されます(図1a)。このように2個の前核が形成されたものを2前核胚といい、正常受精したと判断します。
しかしながら、まれに前核が1個だけ形成されてしまうことがあります(図1b)。
この前核が1個だけ形成されたものを1前核胚といいます。1前核が形成される原因としては、下の2つの状態と考えられます。
1. 単為発生した状態
受精することなく卵子が何らかの刺激によって活性化してしまい核を形成した。
2. 片方の染色体が前核形成できなかった状態
受精はしているが卵子または精子の染色体のどちらか一方の染色体が核を形成することができず、片方だけが核を形成した。
これらの1前核胚は多くの場合、異常受精と判断され、胚移植の対象とはされていませんでした。しかし、浅田レディースクリニックでは、これら1前核を形成した卵子にも着床・出産に至る正常なものがあるのではと考えました。
そこで、雌雄の染色体を識別できる特殊な試薬を用いて、1前核胚の前核および染色体分配過程を観察したところ、1前核胚の1つの核の中には、雌雄両方の染色体が存在している胚も存在していることが明らかになりました(図2)。
このデータをもとに、当院では1前核期のうち、胚盤胞まで発生した胚を移植対象としています。現在までに、1前核期胚を移植した55名の患者さまから赤ちゃんが誕生しています。
このように当院では異常をそのままにせず、科学的根拠をもって治療に取り組んでいます。
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